命とは
命はどこから来るのかを私は知っている。
命は、自然が生み出すものだ。
樹々に覆われた山。
美しい水の流れる川。
風のわたる草原。
そうした世界には肉体を持たない命の元があふれている。
何かの偶然でこの命の元が肉体を持つ。
そうして、目に見える命として、
山や川や草原に囲まれた世界に送り出される。
そうして送り出された命が
元の肉体を持たない状態に戻っていくのを
私たちはたくさん目にすることが出来る。
アリや蚊も、草や木も、鼠やシカも、
日々、無数の命が生まれ、無数の命が死ぬ。
死んだ命は、命の元に戻るだけなのである。
自然に囲まれて暮らさないでいると、
人はこんなに単純な真理を
いとも簡単に忘れてしまう。
私が死んだとき
私は、この世で見送ったたくさんの命と同じように、
自然に囲まれた世界に命の元として戻っていく。