毎日出てゐる青い空

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猫のこと

半野生化した生活を送っていた雄猫がいなくなりました。

時々しか帰ってこず、しかし、やせた様子もなく不思議に思っていたところ、家から400メートルほど離れた場所でノラネコにエサやりをしている人があり、そこでエサを調達していることを妻がつきとめてくれました。猫は未去勢だったこともあり、相手を見つけていたようでした。

その後あれやこれやがあり、もう放し飼いはやめて去勢もし、家に閉じ込めておくことになりました。

ただ、やはり去勢しないで野良生活を送っていたために怪我をしており、それがもとで、弱った状態になっていましたが、ちょっとした隙に飛び出して、それっきりです。

たぶん、どこか薄暗いような場所に潜り込んで、死んでしまったのだろうと思います。

 

8年半ほどの短い生涯に、彼が目にしたものは何だったのかなと、私は、彼が通っていた餌場のそばの土手に上がり考えていました。埃やごみだらけの溝や家の裏。身を隠す場所のないようなコンクリートアスファルトの道路。定期的に草刈がされる土手。

 

家から餌場までのほんの狭い土地しか知らない彼は、一生をこんなつまらない場所で過ごしたのかと思うと、なんとも申し訳のない気持ちになりました。

 

しかし、つまらない環境で生きていることは私たち人間も同じです。いろいろな楽しみが増えたように見えて、つまらない人工物や薄汚い埃とごみに囲まれて一生を過ごすような世界がどんどん拡大されてしまっています。そうして法律によってさらに自然から遠ざけられていっています。

 

同じ8年半の生涯や、もっと短い生涯であっても、猫らしく生きられる環境を彼に提供できていれば、こんなに切ない気持ちにはならなかったでしょう。

 

 

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