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「パラサイト 半地下の家族」は西洋文明(世界システム)に支配されるアジアの現在地を描く

久しぶりに映画を見たいと思っていたところ、ネットカフェで韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を見ることができました。

 

半地下のアパートに住む中年の両親と青年期にある息子・娘の家族4人が皆失業し、貧しい暮らしを送る中、家庭教師の口を得ていた友人が留学するとのことで、息子を後任として推薦してもらえることになりました。息子は入試浪人中であるものの学生証を偽造して、高級住宅地にある、若い高所得一家の高校生の娘の家庭教師として採用されることになりました。この家は有名な韓国人建築家が自ら設計し住んでいた家で、いかにも西洋趣味の作りになっており、一面ガラスの大きな開口部が芝生の庭に面しています。日本各地の一級商業地に建てられるブランド店の入居するビルと同じ美意識です。主人夫婦は少し金持ちという程度ではなく、高級住宅地に広大な敷地の家を所有できるほどの裕福さであり、年齢も比較的若いようです。就職難の韓国で高給を得るために必要なものが「英語」であることが、夫人の会話に何度も不自然に挟まれる英語や、さまざまな人の優秀さを示すために米国での留学や仕事の経験が語られることによって示されています。

 

息子が就職口を得た一家は、策略を使い、他人同士のふりをしながら、この若い成功者の家に家政婦(母)、運転手(父)、主人一家の息子を教える絵画療法の先生(娘)として職を得ます。ここでもベンツが強調されて、私たちが暮らすのは、西洋基準の文明の中であることが示されています。

 

こうしてうまく職にありついたかのように見える一家でしたが、半地下の家に沁みついた嫌な匂が、成功者である若夫婦にとって、許容しがたいものとして強い嫌悪感をもって語られ、貧しさ故にそうした匂をしみこませた運転手である父から、主人に対する憎しみが大きくなっていく様子が描写されています。

 

韓国社会の貧困の状況が、次第に深刻さを増してもう個人の力では対処できないものであることを象徴するように、一家の住む半地下の家にある日大雨の影響で水が流れ込み、場面が変わるごとに水かさが増していき、荷物を持ち出そうと奮闘する父親は、最後には、ほとんど首近くまで水に没してしまいます。

 

一方成功者であるはずの夫婦も、決して幸せではないことを象徴するように、急遽開くことになった夫婦の息子の誕生日パーティに、突然にもかかわらず多くの若い成功者仲間が(おそらくは予定を中止して)集い、プレゼントや歌で見栄をはり、そつなく社交を演じる様子に、家庭教師としてパーティに招かれながらも集団に加わることができない息子が、自分には彼らのように振る舞うことはできないと語る場面が挟まれています。招待客が運転してくる車にももちろん外車が選ばれています。

 

ネタバレになりますが、この大邸宅は、殺人事件により主を失います。韓国社会での成功者と、貧しさにあえぐ人々の上に、西洋社会が君臨していることを示すように、その後の住人としては、ドイツ人が設定されています。西洋的な美意識で設計された家に暮らす西洋人という、しっくりした暮らしぶりが少しだけ映されています。

 

こうして、西洋から始まった経済一体化という世界システムに飲み込まれていく世界という視点と重ね合わせながらこの映画を見ると、この映画には、自由や民主主義を旗印としてながら広められた世界システムが、現実にはカネの力で自由を奪い、貧富の格差を拡大しつつ、奴隷制や植民地支配と同じく、優位性を背景とした不平等な取引を通じて、世界が西洋化されていく過程の中の一場面が描かれていることがわかってきます。人々は西洋的属性を強めるために過酷な競争を求められ、それに負ければ地底の貧困に落ち、勝っても安らぎは得られず、アジア人には暮らしにくい世界が作られていきます。

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