遺伝子組換えの本当の目的
かいつまんでいうと、遺伝子組み換えは、生産量を上げることや、理想的な品種をつくることを目的としているのではない。遺伝子組み換え技術を持つ特定の企業(つまりは特定の株主たち)に、利益をもたらす仕組みを作り上げることを目的としているのだというのが私の分析だ。
たとえば、大きさが均一で、長く保存でき、病害虫に強く、除草剤をかけても枯れない遺伝子組み換えトマトができて、他の品種ではたちうちできないとしよう。通常、このトマトはうま味において従来の品種に劣るのだが、輸送や加工、安定供給という点で優れていることから、あっというまに市場を席巻することになる。
そうなると、農家はこのトマトを作らざるをえなくなってしまう。
もちろん自家採種などできないから毎年苗を買うことになる。その上で、除草剤も同じ企業から買うのである。
こうした手法によって、遺伝子組み換え企業は、莫大な利益を得ることになる。
そして、これこそが、遺伝子組み換えの本当の目的だ。
私たちは、命という本来的に利己主義な存在であり、私たちが手にいれた能力は、命の利己性によって利用されている。遺伝子組み換えに関していうと、増産と改良を目指すというのは表向きの理由でしかなく、本当の目的は上にあげたような独占とそれによる利益の獲得であるということになる。
この視点から遺伝子組み換えをめぐる歴史を見直してみれば、責めるべきは、遺伝子組み換え食品の危険性ではなく、食の独占に持っていこうとする意図のほうであるということが見えてくるのである。