あやとりと精霊
『世界あやとり紀行―精霊の遊戯』を読みました。
あやとりは自然発生的であると考えられており、オセアニアを中心に、世界各地で行われてきました。
不思議なのは、タイトルにもあるように、あやとりは精霊信仰の残る地域に分布していることです。アメリカやブラジルにもありますが、いずれも先住民のものです。
日本のあやとりは江戸時代に始まった300年ほどの歴史しかもたない遊びのようですが、世界のあやとりは、有史以前からあったという説もあるほど長い歴史を持ちます。しかも、聖なる人から与えられたものとして秘密にされていたり、物語と結びついて知恵を伝えるために利用されていたりしています。
こうしたあやとりは、西洋文明の普及と発展に伴って消滅していっています。
どんな因果関係があるのでしょうか。
単に時間がなくなって、あやとりを楽しむ余裕がなくなった?
抽象的な図形から具体的な姿を思い描く想像力を要することが要因?
核家族化や地域社会の崩壊が要因?
国が行う学校教育が問題?
あやとりの動画を見ると、ずいぶん難しいものです。私も子どもの頃あやとりをしましたが、もうすっかり忘れてしまいました。動画を見ていても、少しも思い出せません。このような複雑な遊びを伝えていくためには、親密でゆっくりとした、そして肌の触れ合う時間があったのではないでしょうか。
うまくまとめられませんが、あやとりと西洋文明の関係は、とても重要なことを教えてくれているのかもしれません。あやとり以外にもそのような現象は存在しているのではないでしょうか。そういったものを集めていけば、なぜ西洋文明が行き詰るのかを突き止めることができるかもしれません。