「「おばあさん」がいるのは人間だけ」なのか「人間だけが「おばあさん」になる」のか
「人間以外の動物は、繁殖可能な状態ではなくなると死んでしまう。人間だけが「おばあさん」になっても生きているのは、おばあさんの知恵があることが生存に有利に働いたからだ」という。
ところが事実はどうやら逆であるらしい。
動物たちは、いつまでも生殖能力を失わない。人間でいえば70歳を超えた犬もメンスを迎える。植物も、たとえば老木になっても花を咲かせ、実を付ける。
もし、ヒトだけが生殖能力を早めに失ってしまうとすれば何が原因なのだろうか。
「自然食の効力」で、「人間本来の食事さえとっていたら、精力がなくなることもメンスが止まることもない。(118-119)」とある。(自然の食べ物に頼って生きる狩猟採集者たちは、50歳を超えても生きるものが少ないだけに、この記述が当てはまるのかどうかわからない。)
「自然食の効力」から類推してみると、食べ物を加工することが影響しているようにも思える。焼いたり、煮たり、発酵させたりした食品である。ヒトだけでなく、肉食動物でも草食動物でも、加工された食品を食べることができる。そのままでは食べることのできない穀類も、加工を加えることで食物になる。
加工された食品された食品は、消化しやすくなっており、寄生虫や、細菌も少ないため、肉体に対する負荷が低くなっている。肉体は負荷をかけられることで強靭になり、負荷が低ければ弱くなる。
長い間、食べ物を加工して食べ続けた結果、人は早くに精力を失うようになってしまったのではないだろうか。
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別の説もある。それはヒトだけが短い周期でメンスを迎え、一年中生殖可能であるということである。その結果、早くに卵子が枯渇してしまうのかもしれない。調べてみると、思春期を迎える頃の卵子の数は20万個ほどらしい。その後、月経を迎えるたびに1000個程度減っていく。であれば、200回の月経で枯渇することになる。規則正しく月経を迎え、一度も妊娠しなければ、17年ほどでなくなってしまう。
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人だけが月経を持つようになったのはいつ頃のことなのか不明だが、もしかすると7万年ほど前に2000人程度まで減少してしまった時期なのかもしれない(「パンドラの種子」)。
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いずれにしても、人間だけが生殖能力を失っても生き続けるというよりは、人間だけが早くに生殖能力を失うようになってしまったと考えるほうがよさそうである。
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人間だけが早期に生殖能力を失うとすれば、それは人間の異常性を象徴しているようにも私には思える。