毎日出てゐる青い空

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音は記憶と結びつき、感情をよみがえらせ、人を動かす

作業をしているときに聞くための音楽をYoutubeで再生リストにしてみました。

最近の曲から昔の曲まで、プロの歌から素人の歌まで、洋楽や民族音楽も含めて、ただ雑多に集めたリストです。

リストに追加する曲を探しているときに見つけて、なつかしく思い追加したものの、再生してみると、しっくりこなくてリストから外した曲などもあります。

 

こうしてリストを作ったことでいくつか見えてきたことがありました。今日は、それについて記したいと思います。なお、私は現在50代前半の男性です。ここに記したことは私の心理的な特性の故であるかもしれません。

 

1. 歌の多くが記憶と結びついている

文化祭で学生が演奏しているのを聞いてすっかり好きになった曲があります。佐野元春のサムデイとイルカのなごり雪です。高校生のときに聞いたサムデイは今も大好きな歌の一つです。なごり雪は好きですが、時の経過とともに色あせました。

Men At Work の Down Under は、FM ラジオを聞くようになった頃に流行していた曲です。

倉木麻衣Secret of My Heart は会社で部署を移動したときによく聞いていました。

EGO-WRAPPIN のくちびるにチェリーは、飲み屋の女の子から知りました。

nokko の人魚は入社から数年の間、カラオケでよく歌っていた曲です。

最近知った曲は、ヨルシカのヒッチコックや、Acid Blue Cherryのこの青空の向こうなどです。いずれも、ギターの弾き語りを探しているうちに良いと思った若い人たちを通じて知りました。

松田聖子赤いスイートピーや、夏川りみ涙そうそうも、私がその歌を好きになったときのことをいつも思い出しながら聞いている歌です。

音と記憶の結び付きは、極めて強いものなのかもしれないと、リストを作ることで知ることになりました。

 

2. 歌と結びついた記憶は当時の感情を呼び覚まさせる

上に挙げたような記憶は、そのときの自分の状況まで、今の自分の心理状態を連れていきます。

たとえば、サムデイを聞くと体育館の後ろの入口から入ると演奏がもう始まっていて、1年生のとき同じクラスだった〇〇君がボーカルで、ときどきみかける男勝りの美少女もバンドの仲間なのだと知る。そして、聞いたこともなかった歌だったのに、いきなり飲み込まれてしまう。そんな高校時代を思い出します。

こうして感情と結びつくことで、それぞれの出来事は何度でも更新されて古さをなくしているようです。

 

3. 感情との結びつきに危うさがある

音楽が記憶や感情と結びつきやすいのは、私たちの動物としての性質による部分が大きいのかもしれません。

自然界の音は、聞こえるだけの理由があるときに、聞こえるべくして聞こえます。そうして音が記憶や感情と結びつきやすいのは、それが生き残りのために役立ったためであると思われます。以前、匂いは、無意識のうちに感情と強く結びついているという話を読んだことがあります。音も同じように、私たちの心の深い部分に刻み込まれるようです。

こうして、音楽は、記憶や感情と結びつきやすいという性質を持つため、大衆操作に利用するにはもってこいの道具になります。

 

4. 商業音楽とは別の音楽がある

いったんリストに入れた後で外した音楽の中には、昔CMに使われていて好きだった曲があります。リスト化して他の曲とまとめて聞いていくと、こうした音楽は、なぜかうすっぺらく聞こえてきて外していくことになります。

一方、アイヌユーカラや、アボリジニの音楽、パプアニューギニアの先住民の音楽、郡上田植え歌などは、楽器や特徴は違っていても、何か共通するものを感じます。生活の中で歌われている歌であるということでしょうか。

そうした意味では、私がリストに入れた曲の大部分は、商業音楽です。売るために作られて、商品として消費される存在でしかありません。

音楽が商業化された後の世界に生まれた私たちは、生活の中で生まれた歌が生活の中で歌われていたということを知りません。そして、「コンドルは飛んでいく」のように西洋化された音楽を民族音楽として聴いて満足してしまっています。

 

作業用の音楽リストを作ることで、音楽は、言葉と同じように、虚構を作り出す存在なのだと知ることになりました。

 

 2019年6月28日追記

記憶と音楽の結びつきは無文字社会における歴史認識(重要な出来事は新しいものとして記憶される)という特徴と似ていると思い、どこでその話を読んだのか記憶を探っていましたが、これに関連する記述が含まれていた本がわかりました。『「ことば」の課外授業―“ハダシの学者”の言語学1週間』です。次のように記されています。

時間とか空間という非常に重要な二つの要素を見ても、文字社会は書かれた言語資料を基本にして物事を処理していく。ところが文字のない社会では、情動とか価値といったもので序列をつけたり、物を組み立てたりする傾向が強いんです。

音楽と結びついた記憶は、文字のない社会における場合とおなじように、時間と空間を情動や価値によって序列づける機能があるように思います。

 

 

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