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毎日出てゐる青い空

日々雑感をつづります。ホームページでは本の紹介などもしています。

ホームページ>るびりん書林別館
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私たちは甘やかされた動物

ヒトの本来の暮らしは、

文明が誕生していなかった頃の暮らしであると

仮定してみると

いろいろなことが見えてきます。

 

たとえば、歴史。

首長が生まれて、集団が大きくなり、

町が生まれ国になっていくことが

ヒトの進歩の証だという見方は完全に崩れました。

ヒトは協力し合う存在であると同時に

利己的にもなれる存在でもあります。

そこで、利己的な部分の悪影響をできるだけ

小さくしておく必要がありました。

そのため、強制力を持つリーダーを生まない工夫や、

国家を作らない工夫を組み込んで

ヒトは暮らしてきたのでした。

 

たとえば、性。

アダムとイブの話は有名で、

ヒトは、知恵を身に付けた結果、裸であることに気づき

羞恥心を持つようになったと考えがちです。

実際には、裸体であることに対する羞恥心は

教え込まれた価値観でした。

ヒトは体毛をなくした後も衣服なしで過ごすことができる状況であれば

衣服をまったく身につけずに暮らしていました。

性器を丸出しにしていても恥ずかしくないどころか、

陰毛さえすべて抜いてしまう部族も多くいました。

しかも、そのような生き方のほうがヒトにとっては

本来的でした。

性的な欲求を歪められることのない姿でした。

衣服の着用や羞恥心を持つことは

宗教による支配と結びついていました。

 

 

たとえば、寿命。

つい最近まで、ヒトはころころと死んでいました。

ヒトは4、5人の兄弟を持ち

うち数人は子どものうちに亡くなってしまいました。

自分が生れる前や小さい頃に亡くなった

顔を知らない兄弟がいることは当たり前でした。

親の側からすると、

子どもを亡くすことも当たり前でした。

親も50歳ほどで亡くなってしまい

子は、20代、30代で両親を失うことも当たり前でした。

こういうあり方は野生動物の世界では当然で、

ヒトもそれを受け入れて生きていました。

事故や病気の発生から死を迎えるまでの

期間は短く、ほんのわずかな期間で死を迎えていました。

この悲しみの多い世界で

ヒトはしかし、うちひしがれることもなく

生きてきました。

狩猟採集社会には神父もいなければ坊さんもいず、

必要ともされませんでした。

これが当たり前でした。

 

たとえば、進歩。

国や首長を拒否したように、

人類の歴史の中で進歩を拒否する動きは何度もありました。

江戸時代の日本は銃器を拒否して刀の時代に戻りました。

捕鯨に生きてきたインドネシア東部レンバタ島のラマレラ村では

一度はエンジン付きの船を拒否して手漕ぎ船の生活に戻りました。*

多くの民族が敢えて野蛮を選んできました。**

昔から、さまざまな社会で

さまざまな人々が、

今の方向に進んではいけないことを直感して、

その方向への進歩を拒否してきました。

 

たとえば、精神。

私たちは、文明人に人類の精神の進歩を見出そうとします。

より洗練された状態。

より高められた状態。

そのような状態があると考えます。

ところが、人類史を振り返ってみえてくるのは

まったく逆の事実です。

たくさんの生と死に向き合い、

肉体を使い、

自然と対話しながら自分の力を信じて生きていくなかで、

ヒトは本来の強い心を育てることができていたのでした。

 

たとえば、利他心。

肝の据わった柔軟な人間を育てるのは、

あれこれと口出しをしたり手助けをしたりすることではなく、

じっくり見守ってやらせてみることであると

知っているのが文明以前の人々でした。***

そうして育つ人々は、

甘やかされた依存心の強い仲間を

受け入れてしまうことの危険性を

十分に知っているのでしょう。

 

たとえば、諦念。

芽を出しても育つ前に枯れていく植物たち。

生れたばかりで捕食される動物たち。

死を受け入れていく

ヘアーインディアンの世界では

生にしがみつくことが嫌われ

ヒトは自殺ともとれる死を迎えていました。****

 

私たちは、

人類の偉大さを示す文明社会に生きる素晴らしい存在なのではなく、

人類の頽廃を示す文明社会に生きる

甘やかされて思い上がった存在なのかもしれないと、

ヒトが長く続けてきた狩猟採集社会は

教えてくれているのでした。

 

 

 

*『人間は何を食べてきたか』第5巻「灼熱の海にクジラを追う ~インドネシア・ロンバタ島~」

 

人間は何を食べてきたか 第5巻 [DVD]

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**『ゾミア』

 

ゾミア―― 脱国家の世界史

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*** 『ピダハン』

 

ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

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****『子どもの文化人類学

 

子どもの文化人類学 (1979年)

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