毎日出てゐる青い空

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訓練発達・保護衰弱

表題は露木裕喜男氏の『自然に聴く』からの言葉です。

前後の部分を引用します。

  改めて「自分」というものを確認いたしましょう。私どもは自分で注文して生まれてきたのではありません。自分が眠って、全く無意識状態の中で、食べた者が消化され、同化され、お役を果たした物が排泄されて、生きている、否、生かされて生きているのではありませんか。生かしているのは、体に内在する自然力、自律神経系統の働きにほかなりません。

  この機能の大きな特徴は、『訓練発達・保護衰弱』であります。正常な状態とは、内側に潜んでいる可能性を、訓練によって発達発揮させる……この宿題の答えを出そうとする状態、すなわち自己完成への過程と言えましょう。ですから、判り易く申しますと、"可愛い子には旅をさせる"のであります。寒い思いをさせたくない、苦労もさせたくない、美味しいものを食べさせて満足させたい、と願うのではなく、良いお母さんになるためには、可愛いからこそ子どもたちに、寒さを我慢させよう!空腹・睡眠不足・疲労を喜んで堪えさせよう!そして粗食を家中で悦んで、有難く美味しく食べることを習慣にしよう!もうひとつ、曲がったことは絶対にしない、正しいことは命懸けで守り通す!こういうことに心がけることである、とハッキリ申し上げます。(94ページ)

私たちはここでいう、体に内在する自然力を活かす方向へではなく、かえって負担にする方向へと進んでいるようです。エアコンの効いた環境で仕事をし、自動車を使って移動し、柔らかい物を食べ、医療に頼ります。その結果、快適に暮らすために多大な資源を必要とするようになってしまいました。

 

このような傾向は今に始まったことではなく、人類は一貫して「保護衰弱」の影響を大きくする方向へと進んできたようです。たとえば、調理によって顎の力は弱くなり、栽培によって味がよく食べやすい食物が増える一方で味の悪い食べ物を受け付けなくなりました。水産資源の利用と貯蔵によって、毎日長距離を移動する必要がなくなりました。

 

この200年間、特に大戦後の70年というもの、この保護の度合は急激に高まってしまいました。自動車、エアコン、テレビ、コンピュータなどの普及。人工的な環境の拡大。衛生管理と美容への熱意。加工食品の増加。

 

他方で環境の悪化はヒートアイランドという局所的な現象にとどまらず、気候の過酷化として表れてきています。夏の酷暑と冬の酷寒、大雨と暴風、水不足。毎年のように異常気象が発生します。

 

一方、肉体の虚弱化だけが原因ではないでしょうが帝王切開の割合は増え続けており、人間の手を借りないと出産できない家畜たちを思い出させます。食べやすい野菜たちは栄養素を失っており、大量に食べなくては必要な栄養素を摂取できない不可思議な存在になっています。

 

人類は、どこまで、保護衰弱の道を進むことができるのでしょうか。

私には限界がもうすぐそこまで来ているように思えます。

 

一方で、人類の誕生以来続いてきた、貯蔵も定住も行わない暮らし方を続けながら満足している人々もいます。彼らの暮らしであれば人類史はまだ終わることなく続きます。

 

 

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