アイヌの死者への引導
『アイヌ―歴史と民俗』は、アイヌの伝統的な暮らしぶりや地域性のわかる良い本です。写真が豊富に収録されているため、内容をよりよく理解できます。
この本によると、死者の死装を終え、食料を備え、木製の墓標を家に運びこんでから、司会の長老が死者の供えものを火の神にあげてから、火の神に向かって次のような引導を唱えるそうです。
永い間あなたに育てられた者が、あの世に帰ることになりましたが、本人は何をいってもわからないから、あなたからよくいいきかして下さい。皆で持ちよった食糧を持たせるから、あの世へ持って行き、先に行っている者の仲間に入るように。死ぬということだけで悲しいのに、後で化けて出たりしては恥ずかしいことだから後のことは心配せずふり返らないで行くように伝えてください(日高平取)
私たちは、死を迎えるその日まで、自然環境の恩恵を受けながら、育てられ続けている存在なのでしょう。