毎日出てゐる青い空

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不都合な定住

 今回も『人類史のなかの定住革命』からです。

 

『人類史のなかの定住革命』は、『はだかの起原』と同様に、

生物的な特徴から人類にとって定住とは不都合な暮らし方であることを

指摘した点で、非常に重要な本です。

 

遊動民のキャンプ移動の持つ機能は、生活のあらゆる側面にかかわっている。遊動生活とは、ゴミ、排泄物、不和、不安、不快、欠乏、病、寄生虫、退屈など悪しきものの一切から逃れ去り、それらの蓄積を防ぐ生活のシステムである。移動する生活は、運搬能力以上の物を持つことが許されない。わずかな基本的な道具の他は、住居も家具も、さまざまな道具も、移動の時に捨てられ、いわゆる富の蓄積とは無縁である。 掛谷誠は、遊動する「狩猟採集民の社会では、生態・社会・文化のシステム全体が<妬み>を回避するように機能して」おり、「病因論においても呪いは基本的存在せず、あってもきわめてマイナーな位置しか占めない」と述べている。彼らは妬みや恨みすら捨て去るのであろう。 - 66~67ページ

 

定住生活は不都合であるにもかかわらず、
今では定住者が圧倒的多数になっています。

 

なぜなのでしょう。

 

定住に至ったのは、人類が貯蔵を覚えたことと、
水産資源を効率的に利用する漁獲方法・漁具を発明したことが背景にあるようです。
そこに栽培技術が加わって、簡単に移動できない生活になったようです。

 

簡単に移動できない、不都合の多い生活でありながら、
社会や技術の高度化が可能であり、人間は知恵を使って、

人工化した環境を広げていき、

遊動生活を続けることのできない環境が増えていきました。

 

現在、熱帯雨林が減り続け、狩猟採集民の定住化が図られている動きは、
この長い人類史の延長線上にありそうです。
(私が、狩猟採集生活をしろと言えない理由もここにあります。)

 

人類は知恵を使って快適な暮らしを作ろうとしながら、
実は不自然で、不都合の多い暮らしを作り、
さらに知恵を使うことで、
本来の暮らしを続けることのできる場所を
地上からなくしてしまおうとしています。

 

知恵を使った結果、環境に大きな影響を与える定住生活を
始めてしまったがために、人は遊動する狩猟採集生活の持つ、
生物的に適した生き方を失ってしまいました。

 

私たちは定住さえも否定することによって、
国境も宗教も巨大組織もない
本来の生き方を実現できるのかもしれません。

 

 

 

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