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生き方、就職、環境、国防、介護…あらゆる問題は人類史を問う

人類史のなかの定住革命(講談社学術文庫)』を読みました。

 

人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

人類史のなかの定住革命 (講談社学術文庫)

 

 印象的な言葉がありました。

われわれはいま、自分の誕生のありさまを語ってくれる歴史を持たず、その歴史を語ることに責任を持つ学問を持たない。先史時代の人類史を考察することが科学的な手続きのおよぶ範囲を越えるというのなら、もとより歴史現象は科学のおよぶ範囲を越えた現象といわざるをえない。 (227ページ)

つまり、人類はどのようにして人類になり、今の社会に至るまでどのような道筋をたどってきたのかを未だに知らず、知ることの重要性も認識していないということなのでしょう。本書は、このような問題意識から、人類誕生のありさまを探っています。

 

具体的には、人類は定住したかったができないできたのではなく、この一万年というもの、遊動したかったが定住を強いられたのではないかという視点を提供しています。さらに、社会的な規則や権威の発達、呪術的世界の拡大など、ともすれば農耕社会の特質とみなされてきた多くの事柄は、実は定住社会の特質としてより深く理解できるとしています。

 

人類が長く採用していた遊動(非定住)生活が、ゴミ、排泄物、不和、不安、不快、欠乏、病、寄生虫、退屈など悪しきものの一切から逃れ去り、これらの蓄積を防ぐ生活である一方で、定住生活にはしんどさばかりが目立つというのです。

 

このような視点から現代社会や農耕社会を見るとき、そこにさまざまなしんどさが存在する理由はおのずと明らかになります。だからこそ、「自分の誕生のありさまを語ってくれる歴史」が必要であると西田氏は主張しているのでしょう。

 

これは、私が、宗教、哲学、政治など、定住生活が生み出したと思われる世界に向かう代わりに、狩猟採集、人体、子ども、動物などに目を向けて、人間の本来の暮らしを探り続けている動機にもなっています。

 

私たちは、社会的な規則や権威をますます発達させていく定住社会に生きており、ここで生きる糧を得る他ありません。したがって、政治や経済を無視して生きることはできません。しかし、人類の歴史に目を向けることがなければ、自分のいる場所の地図を知らないまま動き回っているよう状態になってしまうでしょう。

 

人類誕生のありさまを知ると、宗教、経済、法律、衛星、倫理などに対する見方が変わり、価値観の大転換をもたらすことになるはずです。たとえば、定住社会の宗教は定住生活のしんどさの結果であって、遊動生活を本来とする人類にとっては不要な存在であることが見えてきます。

 

人類史を問うことは、しんどい定住生活を強いられて現代を生きる万人にとって必要な行為なのではないでしょうか。

 

 

 

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