自然を観察しながら生きることのほうが最新技術を利用することよりも複雑で楽しい
秋、地中に作られたクロスズメバチの巣を見つけて掘り出し、
幼虫を食べる地域がある。
カエルの太もも部分をエサにして、クロスズメバチを引き寄せ、
目印を付けたエサを持たせて、巣を見つけ出す。
飛び立つクロスズメバチに持たせることができる目印は
ほんの小さく、飛び立ったスズメバチを追いかけることは難しい。
そこで、飛んでいく方向に移動しながら何度も場所を変えて
同じ作業を繰り返し、次第に巣に近づいていく。
最後は、巣に帰るハタラキバチたちの姿を観察することで
巣の正確な位置を知るのである。
狩猟採集民同様、男の楽しみであり、取った巣の大きさコンテスト
なども行われている。
電気製品と違って、何年経っても変わることのない世界ではあるが、
何年経っても楽しさが変わることもない世界でもある。
さまざまな工夫の余地があり、
労力の割に収穫が少ない場合もあれば、
逆に多いこともある世界でもある。
キノコ狩り、山菜狩り、ウナギの置き針釣りなども同様である。
有機的に構成された世界は、
無機的な世界とは異なり、
人間の関わらない動きが存在している。
そこに、楽しみがあり、
安らぎもある。
人工的な環境を増やすほどに
失われていくその世界は
人工的な環境によって得られる価値とは
比べ物にならない深みを持っている。